自動車ニュース
年頭所感― 公益社団法人 兵庫県バス協会 会長 長尾 真
「安全は全てに優先する」

年頭にあたり、謹んでお慶び申し上げます。
皆様方におかれましては、新型コロナウイルスの感染状況を気にかけながらも、親戚や知人の方々と久しぶりに会い、互いの近況報告といったお正月を迎えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

新型コロナウィルスは、昨年も我々の事業に大きな痛手となりました。特に大阪府・兵庫県は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が長期間にわたって発出や適用されたため、需要の回復も低調となってしまいました。

国民の期待が大きかったオリンピック・パラリンピックも、無観客開催ということで、選手やプレスなど関係者輸送を担った貸切バス事業者には一定の恩恵があったものの、コロナ前に予想されていた状態とはかけ離れており、決して手放しで喜べるものではありませんでした。

10月以降は、第5波が落ち着いたところで緊急事態宣言も解除され、修学旅行といった学校団体の需要が回復しました。しかし、一般団体の需要が低調なため、年明け以降は引き続き厳しい状況が続くと予想されます。また、感染状況が落ち着いたと思えば、原油価格の高騰や、新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)の拡大により、引き続き予断を許さない状況となっています。

そのような中、昨年当協会としては、関係先への要望活動などを積極的に行ってまいりました。まずは、各自治体の集団ワクチン接種に対してバスを活用するよう要望しました。特に、地方部において分散する高齢者へ迅速なワクチン接種を実施する手段として貸切バスを活用することで、接種率の向上に貢献いたしました。次に、地域公共交通会議等でバス事業の厳しい現状、特にコロナによる輸送人員の大幅な減少について訴えてまいりましたが、地方創生臨時交付金の使途に関しては自治体の裁量に委ねられる部分が多いだけに、我々バス事業の窮状をしっかりと訴えることにより、交付金の活用を促進する道筋はつけられました。そして、乗務員に対する優先的なワクチン接種についても要望しました。医療従事者と同様、第一線でお客様の輸送を担う、いわゆる「エッセンシャルワーカー」に対するワクチン接種を要望し、いくつかの自治体で対応いただきました。

このほか、新聞・ラジオを活用し、県民交流バス助成金の活用など、バスの利用促進についてもPRを行いました。
以前より、公共交通は「環境に優しい」と言われていますが、自動車業界全体におけるカーボンニュートラルの取り組みは進んでおり、バス業界でもFCV(燃料電池バス)やEV(電気バス)等の導入といった事例が少しずつ増えています。兵庫県においても、昨年4月に姫路市で西日本初のFCVが導入されました。車両購入費や使用年数、水素ステーションの整備など、諸課題はありますが、今後の導入拡大の第一歩になったと思います。兵庫県、神戸市や姫路市のように、水素への取り組みを強化する流れに乗じていく姿勢が大切であると思います。最近ではSDGsの取り組みがあらゆる業種で進んでいます。今までバスは“地球に優しい公共交通”と謳っていましたが、カラの状態で走っていては、環境汚染の元凶と言われかねない時代になってきています。今後は、違う角度から地球環境対策に取り組んでいかなければならないと感じています。

しかし、コロナ禍で各事業者とも経費を切りつめている状況であり、簡単なことではありません。まずは「どうすれば一人でも多くの方にバスに乗ってもらえるか」ということを、業界に身を置くすべての人が常に考え、そして実践していくことが必要と考えます。事業者それぞれの立場や思惑はあるでしょうが、この苦しい時期だからこそ、同じ方向を向いて、お客様を増やすべく行動していただきたいと思います。

最後に、今までいろいろ申し上げましたが、何をおいても「安全は全てに優先する」が大前提です。今年も着実にお客様の信用を積み重ねることで、新たな事業拡大の芽も出きます。新型コロナに対する心配はまだまだ払拭されていませんが、必要以上に恐れず、できることが何かを考え、状況を見ながらすぐに行動することが、我々の未来を切り開く第一歩になると確信しています。
将来に向けて今年が明るく楽しく面白い一年になることと、皆様の事業の繁栄、そして皆様とご家族のご健康とご多幸を祈念して、年頭の挨拶といたします。