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第51回物流セミナー
「標準的な運賃の実現は、約款と連動で」森田氏

兵庫県トラック協会(原岡謙一会長)は11月2日、ANAクラウンプラザホテル神戸で第51回物流セミナーを全ト協共催で開催した。

開会で原岡会長は「新型コロナウイルスの影響で、物流業界も貨物の減少が顕著になっている。また、少子高齢化によるドライバー不足、労働時間が他の仕事に比べ長時間であり、低賃金だ。現状のままで、必要なドライバー数を確保することが難しい。これにより経済活動に支障をきたすことになりかねない」と業界の現状について述べ、また「コロナによる経済の冷え込みにより、荷主の理解を得にくい状況。ドライバーの労働状況の改善に必要な、待ち時間の短縮や運送契約の書面化、よりトラック業界の働き方改革の実現に向けてご理解とご協力を賜りますようお願いします」と挨拶した。

来賓の池田博美・兵庫陸運部長は「標準的な運賃の告示は、荷主企業様の協力が不可欠。当局は事業者のみなさまが荷主と交渉しやすいよう、標準的な運賃の告示制度の趣旨を荷主へ周知していく。荷主には理解、事業者には活用をお願いしたい」と挨拶。続いて岸泰広・兵庫労働局労働基準部長は「2024年4月1日以降、時間外労働の上限規制が年間960時間となる。各事業所のみなさまには上限規制の適用が円滑に進むよう準備をお願いしたい。また、労働災害が増加しており、リスクアセスメントの取り組み継続してほしい」とした。また矢野浩氏・兵庫県警察本部交通部長は「令和3年度9月末の交通事故の死者は、77名(+10)で、高齢者の死者は49名となっており、全体の死者数の63.6%と大きな割合を占めている。全国の交通事故による高齢者の死者数56.6%を大きく上回るという結果だ。またJAFの調査による信号機のない所での歩行者への一時停車は43.0%で昨年より14.1%下げることができたが、全国平均よりも高い状況。本県警では、目で合図のアイコンタクト運動を展開。実行の協力をお願いします」とした。

講演は、後藤孝行・近運局自交部貨物課長が「トラック事業に関する働き方改革の取り組みについて」と題して述べた。貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(議員立法)の目的としては、担い手である運転者の不足により重要な社会インフラである物流が滞ってしまうことのないよう、緊急に運転者の労働条件を改善する必要があること等に鑑み、所要の措置を講じるものである。これにより「標準的な運賃の告示制度」が設けられ、2020年4月24日に告示された。この制度は、一般にトラック事業者の荷主に対する交渉力が弱いことや、2024年度から年間960時間の時間外労働の限度時間が設定されること等を踏まえ、運転者の労働条件を改善し、トラック事業者が法令を遵守して持続的に事業を行う際の参考となる運賃を示したものである。この制度は、荷主企業の「標準的な運賃」への理解と協力が必要であるとした。

物流ジャーナリストの森田富士夫氏は「運送業界の現状と課題」と題して講演した。森田氏は2024年問題の対応として、時間外労働の上限規制960時間は一般則ではすでに年720時間になっており240時間の差があるとした。これによりたとえ960時間をクリアしても月に20時間分は50%割増分を払わなければならない。2024年問題とは、労働時間短縮がいかに経営課題として重要かを示した。標準的運賃の実現に向けては、原点を再確認することが必要で、ドライバーの労働条件の改善が主目的である。さらに、標準的運賃は標準運送約款と連動して交渉するのが有効とした。理由としては、標準的運賃だけでは、社内稟議を通すのが難しく交渉の幅が狭くなる。労働時間短縮のための待ち時間の短縮などの協力なら、荷主に対して交渉の幅も広くなるのではないかと解決に向けての考えを示した。