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地域住民でつくる移動便 高齢者の生きがい、子育て世帯サポート (2/2) |
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■直面する持続することの難しさ 淡河町ゾーンバスには前身があり、現在と同じく公共交通空白地有償運送の形で2008年3月から2016年の12月まで運行していた。しかし、主催者側の高齢化により廃止となった。住民からの強い要望を受け、地域振興推進協議会が運行を再スタート。国交省から自家用運送の登録認可が下りるまでは試行運行でしのいだ。 廃止が決まってすぐに強い要望がでるほど、地域住民の生活の一部となっているコミュニティバス。しかしながら、住民主体で持続させていくことは至難の業だ。持続可能にするには課題も多い。車両購入費、車検代などの維持費に加え、ドライバーの人件費、ガソリン代を300円の乗車料金と神戸市からの補助金で賄う。運営の収支は常に綱渡り状態だ。 ■高齢者に優しい予約システム また、運営面での課題もある。ゾーンバスの予約手段は電話のみ。早朝から、時間を問わずに入電がある。これがオペレーター兼ドライバーには大きな負担となっていた。そこで、運行の支援・サポートを行っている神戸市が、Urban Innovation KOBE(※)の事業としてコガソフトウェア株式会社( 以下、コガソフトウェア) と協働し、2019年4月から電話による自動音声応答を活用した予約システムを導入した。 ※柔軟な発想や優れた技術力を持つスタートアップと社会・地域課題を詳しく知る市職員が協働して最適な解決手法を見出し、サービスとして構築・実証までを支援する神戸市が行う取組み。 コガソフトウェアはソフトウェア開発やオンデマンド交通システム「孝行デマンドバス」を手がけるベンチャー企業だ。スマホからの予約ではなく、電話からの予約システムを導入したのは、利用者の9割を占めるスマホに不慣れな高齢者に配慮してのことだ。 当初はスマホでの予約システムも検討しており、2018年8月には平均年齢86歳の十数人に対して、スマホを使った予約方法で実証実験を行った。スマホ画面が反応しなかったり、視力の問題で画面の距離感がつかめなかったりという問題があった。コガソフトウェア 研究企画部藤田芳寛氏は、「(スマホによる予約が難しいことは)想定はしていた。宅配便事業者の再配達と同じようなイメージで、自動音声でプッシュ式の予約システムがいいのではと思った」と電話による予約システムの開発を進めた。 予約方法は簡単だ。電話をかけ、自動音声による案内に従ってボタンプッシュで予約を進める。電話番号が登録されているので、予約者は自動的に認識される。24時間365日、いつでも予約できる。「入浴中でも予約の電話がかかってくるというドライバーの心理的圧迫感をとってあげたかった」(藤田氏)。予約が自動になることで、人材面での持続可能性にもつながる。 ■蓄積したデータを利活用することも視野に 2018年11月、2019年1月の実証実験では、評価も上々だった。アナログではなくなることで、他にも利点がある。行き先、利用日時などのデータが蓄積されるため、「将来的には見守りや防災にもつながっていく。副次的な効果をトータルで見るとバランスが取れて採算が取れるのでは」と藤田氏は話す。神戸市都市局計画部の田尻英之氏は、「予約方法は時代に応じて変えていき、地域で持続的にできるような仕組みになって欲しい」と心強いサポーターとして寄り添う。2019年5月より予約システムの本格的な運用が始まっている。 国土交通省によると、平成29年時点でNPO等が実施する公共交通空白地有償運送は全国で106団体存在する。必要な足を地域住民自ら持続させるのは採算面でも運営面でもたやすいことではない。淡河町では神戸市のサポート、地域住民の努力、ベンチャー企業からIT 支援など、いろいろな知恵を持ち寄り生活の足を持続させている。 |