自動車ニュース
【年頭所感】神戸運輸監理部 兵庫陸運部長 勝田 年和 
 業務監査、検査を通じ公共交通の安全確保へ

 新年あけましておめでとうございます。平成22年の年頭にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
 
 最近の日本経済は、海外経済の改善などを背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される一方、雇用情勢の一層の悪化や海外景気の下振れなど景気を下押しするリスクも存在する状況にあります。
運輸業界を取り巻く経営環境は、エコカー減税・補助金の交付等の諸施策により、新車の販売台数は若干上向いてきておりますが、少子高齢化による公共交通機関利用者の減少や輸送需要の低迷及び地球環境・地域交通環境改善や安全対策のためのコスト増等、昨年と同様の厳しい状況が続いていくものと認識しているところです。
 
 運輸関係事業者の皆様には、安全・安心の確保を大前提としつつ、創意工夫をもって事業にあたられることをお願いしますとともに、兵庫陸運部といたしましても、需要拡大のための環境づくりとしての、交通運輸や観光の振興等に引き続き努力してまいります。
 
 交通運輸分野における安全の確保は最優先・最重要課題であります。一方、事故やトラブルを未然に防止するためには、事業者自らが安全性の向上に向けて、高い意識を持つとともに、積極的に安全対策の推進に取り組むことが重要であります。兵庫陸運部としても、引き続き自動車運送事業者に対する保安・業務監査、自動車検査等を通じ、公共交通の安全確保に努めて参ります。
 
 運輸安全マネジメント評価については、導入から3年が経過し、事業者においては安全管理体制の構築、安全意識の向上が見られるところです。
昨年10月には、自動車運送事業に係る運輸安全マネジメント実施要領が改正されました。改正点の第一は、運輸安全マネジメント評価対象の拡大(乗合バス100両以上、第1当事者の死亡事故を引き起こした事業者等)。第二点目は第三者機関においても(昨年10月に独立行政法人自動車事故対策機構が認定)安全マネジメント評価が実施できる点、第三点目は事業者向け安全マネジメント手引きがわかりやすく具体的な取組例等(下請事業者の安全管理体制の構築・改善の指導等)を入れて改訂いたしました。
改正実施要領を活用し、引き続き運輸安全マネジメント評価等を精力的かつ効率的に実施するとともに、本制度の浸透・定着に努めてまいります。
 
 自動車運送事業については、昨年3月に国土交通省において、「事業用自動車総合安全プラン2009」を策定し、今後10年間で死者数半減、飲酒
運転ゼロといった目標を設定しました。運輸安全マネジメント評価対象の拡大、安全体質の確立、コンプライアンスの徹底、IT・新技術の活用などハード、ソフトの両面から、さらに、自動車運送事業の行政処分基準が昨年10月に強化されたことから、安全性重視の事後チェック体制の強化、悪質違反事業者に対する行政処分の強化、重大事故を引き起こす前の安全面の予備的監査体制の強化を引き続き図るとともに、より一層の安全対策を推進してまいります。
 
 また、車両の安全性につきましては、安全で環境との調和のとれたクルマ社会が形成されるよう、自動車点検整備推進運動等の機会を捉えて自動車使用者への点検整備の推進を呼びかけてまいります。
 
 それでは、地域公共交通の活性化・再生及び利便性向上について触れたいと思います。
 
 地域公共交通の活性化・再生については、県下では、昨年までに14地域において「地域公共交通活性化・再生法」に基づく「地域公共交通総合連携計画」が策定され、同計画に沿った具体的な事業が実施されるなど、地域の取り組みが積極的に進められております。引き続きこの法律や各種支援制度等を活用しながら、「法定協議会」に積極的に参画し助言、支援をしてまいります。

 また、鉄道駅、小学校等におけるバリアフリー教室の積極的な開催等を通じ、「心のバリアフリー」も併せて推進してまいります。
 
 次に、自動車運送事業の各事業について触れてまいります。
 バス事業については、地方バス路線の維持やコミュニティバスの導入等地域住民の生活交通の確保を図るとともに、多様化する利用者ニーズに的確に対応した安全で安心な輸送サービスを確実に提供するため、地域住民、自治体、交通事業者が一体となって地元で設置される「地域公共交通会議」や「地域協議会」等に積極的に参画し助言、支援をしてまいります。
 
 さらに、移動制約者の輸送に関する社会的要請や高齢化社会を迎える中、ノンステップバスの導入促進など、公共交通機関を利用しやすい環境整備を進め、利用者利便の向上に努めてまいります。
 
 また、バス利用向上施策として、交通系ICカード導入促進のほか、バスロケーションシステムの導入拡大など、ITを活用したバスの活性化等に取り組んでまいります。

 タクシー事業については、輸送需要の低迷が続くなか、供給過剰や過度な運賃競争、歩合制主体の賃金等といった要素から事業者の収益基盤の悪化や運転者の労働条件の悪化、違法・不適切な事業運営の横行、交通問題、利用者サービスの不十分さといった諸問題が発生し、利用者の利便性を損ねているという指摘がなされているところです。
 
 このような諸問題への対処のため、昨年の通常国会において、「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」いわゆるタクシー新法が、全会一致で可決・成立いたしました。この新法を着実に実施し、タクシーの地域公共交通としての機能を回復・向上させていかねばなりません。そのため、県下に設置した協議会における議論を円滑に進め、実のある地域計画の早期作成を目指します。
 
 トラック事業については、経済不況の中、課題は山積しておりますが、国内物流の基幹的輸送機関としての機能が発揮されるよう、適正化実施機関と連携を図りながらコンプライアンスの徹底、荷主とのパートナーシップ会議等を通じた適正取引の推進や、補助制度の活用等による環境対策を推進することにより、今後とも、安全・安心で効率的なトラック輸送の実現を目指してまいります。
 
 次に、自動車検査・整備及び登録業務について触れたいと思います。

 我が国の自動車保有台数は、昨年8月末では全国で約7,904万台で一昨年8月末の約7,924万台と比べますと0.32%の減少となっていますが、兵庫県下においては297万台を超えるなど未だ自動車は国民生活の足として必要不可欠なものとなっています。

 その反面、交通事故、交通渋滞、排気ガスによる大気汚染、CO2による地球温暖化、不正改造車による暴走行為、保守管理の不備に起因すると思われる大型トラックのホイール脱落やバスの火災事故など取り組むべき課題が山積している状況であります。
兵庫陸運部としましては、皆様方とともに、これらの諸問題に積極的に取り組み、安全で環境と調和のとれた快適なクルマ社会の実現に向けて努力してまいります。
 
 自動車の安全確保は、自動車使用者自ら、日常点検整備、定期点検整備を通じて、自動車を適切に保守管理することが基本であり、これらを支える自動車整備業界の果たす役割は、大変重要であります。
 
 兵庫陸運部におきましては、リコール制度の充実を図るとともに、例年実施しております「不正改造車を排除する運動」では、街頭検査等を通じ不正な二次架装の排除及び不正改造車を排除し、交通の秩序維持を図り、「自動車点検整備推進運動」では、自動車使用者に対し点検整備の必要性について啓発に努めてまいります。本年も昨年同様これらの運動を通じ、より一層、安全の確保に努めてまいります。
 
 また、一部の事業者による指定整備制度を悪用したペーパー車検等、指定整備制度の根幹を揺るがしかねない不正事件が発生しています。これらの行為は、整備業界のイメージダウンにとどまらず、指定整備制度の社会的信頼を損ねるものです。引き続き不正の根絶を図るため、指導・監督の徹底を図り、悪質な違反に対しましては、厳しく対処してまいります。
 
 環境保全につきましては、自動車NOx・PM法を着実に実施することはもちろん、今後とも、ディーゼル黒煙クリーンキャンペーン期間を含め、積極的に街頭検査を実施し、環境改善に寄与していくとともに、環境にも悪影響をまねき、自動車の不具合の要因となる不正軽油に関しましても、その使用の排除に努めてまいります。
 
 また、「環境保全優良自動車関連事業場等表彰制度」を活用し、環境に優しい優良事業場の拡大を図るなど、省資源循環型社会の構築に向けた環境対策に取り組んでまいります。
 
 また、車両の安全性については、大型自動車のタイヤ・ホイールの脱落による事故やバスの車両火災事故が続発するなど、交通事故は依然として憂慮すべき情勢であり、安全で環境との調和のとれたクルマ社会が形成されるよう、自動車使用者への点検整備の推進を呼びかけるとともに、街頭検査の充実を図り、不正改造車等の排除に努めてまいります。
 
 次に登録業務については、自動車使用者の登録手続きの負担の軽減及び行政事務の効率化の観点から導入されました、自動車保有関係手続きのワンストップサービス(OSS)は、東京・大阪など6地域に加え、兵庫県においても一昨年1月29日からサービスを開始し、同年11月26日からは住基カードに加え、従来の印鑑証明書も使用することができるハイブリッド型ワンストップサービスを導入し、システムの改善を図ってまいりました。兵庫県独自の取り組みとして昨年12月を「OSS利用促進強化月間」とし、販売会社に対してOSS利用率向上のための推進運動を展開してきました、また(社)日本自動車販売協会連合会兵庫県支部では、昨年9月末に新システムを立ち上げ、会員のOSS利用率向上に努めております。今後とも近畿運輸局・関係機関・関係団体と連絡を密にしてワンストップサービスの利用促進に努めてまいります。
 
 また、一昨年11月4日には、登録識別情報制度が開始されました。この制度は、所有権留保された自動車やリース自動車など、所有者と使用者が異なる自動車を大量に保有している企業等が合併・本社住所変更等を行われ、所有者が変更登録や移転登録をする際、使用者が所持する自動車検査証の記入申請が伴っていましたが、この制度改正により所有者と使用者が異なる場合で登録識別情報の通知を希望する所有者に限り、電子申請で運用を図り使用者からの記入申請を不要とすることとしております。最近では、情報提供・閲覧件数とも順調に推移しており、利便性の向上に資するものとして、十分な個人情報保護対策を講じつつ本制度の周知及び適正な利用拡大に努めて参ります。
 
 今後とも申請者の利便性向上を踏まえ、本制度の周知及び普及拡大に努めてまいります。

 以上、新しい年を迎え私の所信を申し述べさせていただきましたが、関係団体、関係行政機関の皆様方には、なお一層のご支援、ご協力をお願い致しますとともに、今年の一年が皆様方にとって大いなる発展の年となりますよう祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。