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トヨタ、燃料電池の触媒「白金」をリアルタイムで観察可能に (3/3)
新たに開発した観察手法の特徴

これまでの観察手法は、初期状態(使用前)と反応性低下後(使用後)の「白金微粒子」を抽出し、それぞれを比較する定点観察です。これにより、反応性が低下した時の「白金微粒子」は、初期状態にくらべ粗大化していることが分かっているが、粗大化に至る挙動プロセスを観察することができないため、要因を解析するには、反応性低下のメカニズムを推測する必要があります。

これに対し、このほど共同研究グループが開発した観察手法の特徴は、原子レベル(0.1nm)の物質の観察や分析ができる「透過型電子顕微鏡」を用いて、FCスタックのセル内で実際に化学反応が生じる環境・条件と同一の状態を模擬できる、新しい観察用サンプルを作ることに成功し、発電の経過とともに「白金微粒子」が粗大化するプロセスをリアルタイムで観察できるようになったことにあります。

新しい観察用サンプルは、「透過型電子顕微鏡」の内部に組み込むためにFCセルを模擬した極小のものであり、これが「透過型電子顕微鏡」の中に組み込まれた状態で「白金微粒子」に電圧をかけることができる装置を開発しました。これにより、FCが作動(発電)している時と同じ、化学反応を起こした状態で「白金微粒子」が粗大化していく環境を「透過型電子顕微鏡」の中で実現でき、粗大化のプロセスをリアルタイムで観察することが可能となりました。

以下の写真は、「白金微粒子」が、粗大化していくリアルタイムの観察結果です。
白い点線内は、担体(土台)となるカーボン上で「白金微粒子」が移動して複数が合体し、より大きな「白金微粒子」になった状態(粗大化)を捉えているとしています。