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バスの運転者の確保・育成を考えるシンポジウム
2月3日、大阪科学技術センターにてバス運転者の確保・育成を考えるシンポジウムが行われた。
開会で大辻充・近畿運輸局自動車交通部長は「安定的に地域の公共交通を担う人材を確保することは、われわれとしても最重要課題と認識しており、本シンポジウムが人材確保に向けて有益なものになってほしい」と挨拶。

基調講演で井上学・平安女学院大学国際観光学部准教授は『ドライバー確保に向けた魅力ある職場と企業ブランドの構築』と題し、始めに全産業の年代別平均給与の変化を取り上げた。
その上で「若手が夢を描けなくなっている。たとえ給与が安くても頑張ればこういった未来が待っていると教えていかなければならない。バス業界はドライバーが集まらないといわれるが、飲食やアパレルなどに就職したい学生はいる。今の学生はやりがいのある仕事を求めているので、バス業界もキャリアデザインを描くことが大事」とした。

また「自社の強みの発見をすることが大事で、ドライバーが集まって壁新聞を作成すれば、会社の強みやブランドを共有し、モチベーションも向上できると」と続けた。

続いて小坂真弘・日本PMIコンサルディング株式会社代表取締役社長は「採用に関して努力していても、定着化させる努力をしている企業は少ない。人材不足に困っていない会社は定着するように努力している。まずは自分の会社をしっかり分析し、人材像の明確化をする必要がある」と指摘。
また採用に関しては「本人だけでなく配偶者や家族を味方につけることや、定着率アップのために組織に所属する安心感を与えることも必要」と述べた。

尾上勝政・宮崎交通株式会社乗合部長は「当社では、多様な人材が活躍できる現場の整備を目指して、専用のパンフレットやポスターを作成し高卒運転士や女性運転士の採用を行っている。年間で50名の採用に成功しているが、さまざまな理由で同じくらいの人数が退職するので、新たに短時間の勤務制度を導入し、退職率減につとめている」と発表。

同パンフレットでは高卒運転士が入社から運転士や運行管理者、マネジメント職までのキャリアプランが描いてあり、求職者にとって将来がイメージしやすいものであった。

公演終了後にパネルディスカッションが行われ、パネリストとして佐伯一也・南海バス株式会社取締役営業部長は「同社は高校卒業者へのアプローチとして入試試験前に職場見学会を開催し、高校へのアプローチを行なっております。平成28年は高校卒業者を2名の採用し、今後も毎年2、3名の採用を継続していく予定です」と述べた。

続いて中野浩二・神姫バス株式会社取締役バス事業部長は「当社は平成28年度は新たに無料で女性限定運転体験ツアーを実施し、1名の応募があった。この体験ツアーは平成29年も実施する予定。他にもバス運転士健康管理や独自の福利厚生を実施するなど力を入れている」と取り組みについて説明。
これに対し井上学氏より「無料で行うには会社的に負担が大きいのでは?」と指摘があったが、「採用には大きなお金がかかる。これには安心・安全への取り組みや人材に対しての投資だと思っている」と説明した。

コメンテーターとして参加した新屋敷昭一・近畿運輸局自動車交通部旅客第一課長は「若年層や女性にとって何ができるのかを考えた素晴らしい取り組みだと思う。近畿運輸局としてもバス運転者の慢性的な人材不足について事業者の皆さまや自治体の方々とコミュニケーションを取りながら知恵をしぼっていきたいと思う」と述べ、討論終了となった。

また閉会の挨拶で井波洋・一般社団法人大阪バス協会会長は「人材不足は日本バス協会の喫緊の課題。安全やサービスにお金を掛けていかないといけないが、トライアンドエラーを繰り返すことによって意味があるものになっていく。まずはやれることをやってみることが大事」とした。